東日本大震災によせて




メイドインジャパンの誇り。
JI MALL 上杉賢郷さん



― 東北との関わりを持たれたきっかけを教えて下さい。

震災から半年後の2011年9月11日に50人ほどで福島県南相馬市へボランティアに行ったのが始まりです。被災を逃れた公園で祭りをして、地元の人に笑顔になってもらおうという安易な発想からの行動でした。現地に着くと雨が降っていて、ボランティアの中からも「(雨に含まれるかもしれない)放射能は大丈夫なのか?」と声も出ているような段階でしたね。自分は公園の水道水でうがいをしたり無頓着だったんですが、そんな声を耳にして「南相馬はこんなことになっているんだな」と実感しました。いざ始まったお祭りは子どもの姿が無く、お年寄りばかりで、活気が無かったんです。このままでは気持ちが入らないので、被災地を見せて欲しいと地元の人に交渉して、2〜3人と一緒に原発30km圏内の沿岸部方面へ連れて行ってもらいました。

― 沿岸部はどのような状況でしたか?

検問所のものものしい完全防備の警察に、鳥肌が立ちました。「この先誰一人入れません」と言う現実感の無い光景に、まるで映画の世界にいるようでした。私は子どもの頃から興味があって、広島の原爆について学んでいるんですが、被爆者三世と差別を受ける人達が現在おられます。福島にも同じような思いをする人が、この先出てくるのではないかと、その時感じました。会場に戻ってお祭りを行う中、一人の女性が自分の前で急に泣き崩れたんです。「自分達の身に及ぶ危険にも顧みず、よく来てくれた。感謝している」と。その言葉を聞いて、自分はとんでもない所に足を踏み入れたんだなと思わされました。福島の問題は複雑で、100年以上かかる事さえあると思われる中、ボランティアができることなんて何も無いと思いもしました。

― それでも継続されたんですよね?

地元に帰ってからも度々足を運び活動を続けていましたが、金銭的な負担もあったり気持ちはモヤモヤしていました。継続的なしくみを作るには何をすれば良いか考える中、風評被害等で物を売れずにいる方々の品物をインターネット販売する事を始めようと、2012年5月30日会社を設立しました。被災地を特化すると、風化によって会社が成り立たなくなるのは目に見えているので、ビジネスを考え直して取り組む方向で進めました。東北を立て直す為には大手企業の力を借りたいですが、先ずはその企業自体が潤っていないといけませんよね?営業に回る中で、中小企業の苦しい実態も嫌と言うほど知り、“ものづくり大国日本”のはずが、その日本の中でさえフェアなトレードが出来ていないことを目の当たりにしました。なので、日本国内でのフェア・トレードを目指して会社を運営しています。

― 会社の経営はいかがですか?

実際厳しいですよ。でも、必要とされる事を実感しているので、これからも発信し続けたいと思います。今の若者にモノの価値を知って欲しいんです。こだわりを持って作った物は、その分価格が上がって当然なのですが、消費者が手にするのは求めやすい価格帯の物。良いものへの拘りは間違っているのか?と、生産者が疑問を持ってしまっている流れが見られる、この状態を「やばい」とさえ思います。大手企業は参入も早いが、見極めるのも早いじゃないですか。インターネット販売は、そのラインが低く応用が利くのが利点だと思います。

― インターネット販売でのこだわりはありますか?

当社のコンセプトは「定価販売」です。セールもキャンペーンも一切しません。購入者からは批判もありましたが、製造者からは安心されます。再販売価格維持制度という20年程前に作られた古い法律が、今の値下げ商法に繋がっているんですが、流通に関わる者が、間違った軌道を全うな方向へ修正をしなくてはならないですよね。小さい頃、一頭の牛から皮を剥ぎ取り解体して行く流れを「こども会」の工場見学で見たことがあるんです。ちょっと変わってるでしょ。でも、この工場見学のお蔭で、自分が牛肉を口にするまで、どのようなプロセスがあり、どのように人の手が加わっていたのか知ることができたからありがた味がわかるんですよ。当社の販売商品の中に1kg5000円のお米があるんですが、なぜこの価格になるのかわかるような体験ツアーも考えたいと頭に描いてます。行政が予算を出してくれれば一番いいと思いますが…難しいでしょうね。今の日本人は、資本主義を勘違いしているんですよね。お金を出すから偉いわけでなく、物を作るから偉いわけでもない。本当はフェアな立場にいるんです。

― お米を始め、色々な物を販売なさっていますね?

現在、障害者とデザイナーのコラボ商品の開発を進めています(2月ネット販売開始)。
これもフェア・トレードとしてです。障害者の一ヶ月平均賃金、ご存知ですか?国の発表によると約12000円、ですがもっと低い所は山ほどあります。流通価格と同じ問題を抱えているんですよね。障害者を建前上雇っている大手企業が多い中、私と同じ疑問を抱いて、フェアに考えている作業所には、当社からも仕事をお願いしています。自分の両親が障害者で、決して裕福ではなかった経験から、この問題には当事者として考えています。

― 東北の現状については、どう考えられますか?

現在の東北は、駄目なところが多すぎて、斬新なことをしない限り復興を目指すのは難しいのではと思います。それにしても放射能問題が大きすぎます。元に戻すのは「復旧」であって、良くなってこそ「復興」ですよね。今の東北をモデルになる方向に持っていかない国が理解できません。そして、実際に何が起こっていて何がされているのかわからないのに、その事自体に国民が関心を持っていない事が怖いです。3年間、東北の子供たちがストレスを抱えながらも生きているのは凄い事で、その子供たちに大人は答えていかなければならない。私は周りに「変人」「偽善者」と言われることも多々あるのですが、間違ったことはしていないと思っています。

― 東北の復興についてはどうお考えですか?

東北には生きていく為に必要な仕事の確保が必要不可欠です。被災地への思いはあっても何もできない、そう思っている人たちに、インターネットで販売しているモノを購入するのも一つの支援だと訴え続けていきたいと思います。自分達の会社が潰れた時は「社会性の高いことをしても駄目な国なんだ…」と思うしかないのかな、とも思っています。
祖父母の代の人は、よく「日本製以外の電化製品は買うな」と口にしていました。日本製の品質が良かったのもありますが、そこには日本人としてのプライドも含まれていたのではないでしょうか。東北だけに限らず、日本という「この国に住んでいる事を誇りに思う」と、改めて見直す時なのではないかと思います。大人が利益追求で教えてきた中で、日本の事を考えてくれる若い世代の人達を育てていくビジネスの在り方も自分にとっての課題です。志の高い、でも向こう見ずな若者が描いているビジョンに近づく為には何をしていくのかと、一緒に考えるのは自分も楽しいですしね。点と点を結んで行き、支援活動している方を支援していくことを考えていくのも私の仕事の一つだと考えています。




上杉賢郷さん 30歳
大阪府出身。株式会社ジャパンインプルーブ所属。震災半年後に福島県南相馬市を訪問したことがきっかけとなり、2012年5月、日本製の商品のみを取り扱うインターネット販売会社を設立。「民間の力を合わせて輝く日本を創造する」という目標を掲げ、ものづくりにこだわる方々が活躍できる場を提供している。

【リンク】
JI MALL
株式会社ジャパンインプルーブ






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