東日本大震災によせて




満月の夜会で思い出すきっかけを。
ワインショップFUJIMARU 藤丸智史さん



― 満月PUBについてお話をお聞かせ下さい。

本業はワインショップでほかにいろいろなことをやっていますが、一番継続して活動していたのが満月PUBです。満月PUBを始めたきっかけは、僕自身が神戸の震災を経験して、ちょうどセンター試験の次の日だったんです。阪神高速が倒れてたところがうちの親父の会社の前で、東京の大学に行きたかったんですが、関西に留まることになりました。
その後にもう一度大きな地震(東日本大震災)が起き、原発事故の件で「想定内」「想定外」という言葉が頻繁に使われましたが、阪神淡路大震災の時にも「神戸、大阪は震災に遭わない」と言われていたにも関わらず、想定外の震災が起きました。「想定外」はあり得ないと神戸の僕たちは分かっていたはずなのに、時間が経つとともに忘れてしまっていたんです。もう同じ過ちを犯すわけにはいきません。
僕達も震災に遭って最初に大変だったのは生活することでした。家は半壊で済みましたが、生きていくことに精一杯だった時期から一段落すると「どうやって生活を保っていくか」「どうやって元気になっていくか」ということに視点が移りました。でも同じことが起きてしまえばまた振り出しに戻ってしまいます。僕たちが17年間で忘れてしまったせいで同じことが起きたわけですし「忘れないようにするためにはどうすればいいだろう」と思ったんです。忙しい日々の生活の中でずっと他人を応援し続けるのは難しいですよね。どうやったら想い続けられるだろうと考えていた時に、僕の知り合いが震災前から東京で満月ワインBARやっていて、それを思い出したんです。そのコンセプトが「月に一回満月がやって来るので、皆が同じ満月を見上げるBAR」というものでした。それは友達の内輪のイベントだったので趣旨はちょっと違ったんですが、「満月」というキーワードが気に入りました。日付、曜日だと忘れちゃいますよね。でも、たくさんの人が気づくことができて、大阪でも、仙台でも、どこで見るのも同じ満月を見上げるわけで、これだ!と思ったんです。例え、満月の日じゃなくても大事な事は「忘れないこと」で、満月は近づけば思い出す、ということが大事なんです。入場料などは無しにして300円から飲んだり食べたりできるようにしていますし、できるだけ敷居を低くして、いろんな人に来てもらたいです。

― 運営について苦労などはありますか?

毎月行うのは正直きつい部分もありましたね。月に2回、満月が来ることもありますし、いつも100名以上のお客さんに来て頂いて、嬉しい半面、ずっとこの様にイベントが続けられるのか不安を感じていました。しかし、スタッフも「やりたい」と言ってくれ、現在も運営はうちのスタッフと協力して行っています。むしろ僕はこのイベントの運営よりも、コンセプトがぶれないように軌道修正をしているような立場です。

― 「満月PUB」という名前についてはどのような想いがありますか?

東京では満月ワインバーってやっているんですが、「満月PUB」という名前にしたのも、ワインだけじゃなくて、ビールや日本酒も楽しんでもらいたいという想いからです。うちはワインショップですが、日本酒を扱っている酒屋さんとも一緒にやっていますし、ワインだけでなく、いろんな飲み物がある「PUB」という名前に変えたんです。会場も毎回同じ場所ではなく、「やりたい」言ってくれたレストランなどを転々としています。このイベントは震災の半年後くらいから始めて、30回を超えていて、毎回、100人から多い時は200人近いお客さんに来て頂いています。WEBでの告知しかしていないので、ほとんど口コミで広がったのではないかと思います。

― 来月もまたイベントを開催されますよね?

そうですね。来月は3月15日か16日に満月PUBを開催しますが、それとは別に番外編として3.11の夜にもイベントを開催します。フランスで、東北に向けてワインをつくっている生産者がいて「キベトウホク」という名前のワインがあります。そのワインがリリースされるので、それをみんなで献杯したいと思っています。

― 今後どういったお客さんに来て頂きたいですか?

別に来てもらわなくてもいいんですよ。売上はやってるお店の売り上げなので、どっちかっていうと赤字なくらいです。「来てもらいたい」より「知ってもらいたい」です、こういう会をやってるというのを伝えてもらいたいです。
僕らも阪神淡路大震災の時に経験したんですが、金銭的な支援は、しばらくするとどうでも良くなりしました。3〜4年経って普通の生活が戻って来て、何が大事だったのか、と今思うと、震災を覚え続けることだと思います。発信だけでもやり続ける事が大事だと思っているので、何かやりたいと言ってくれる人がいたらみんなでやったらいいと思います。あくまで、主旨は気軽な感じで来てもらうことですから。

― 最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

やはり「風化させなこと」ですね。あとは、興味持って欲しいです。
例えば原発問題ですが、東日本大震災による原発事故が大きな問題として取り上げられていますよね。あの地震が起きてなければ、もっと酷いことになっていたかもしれません。そもそも自分たちがコントロールできないものを作ってしまったことが問題だと思います。ただ、僕は「無くせ」とは思いません。
例えば車による事故で毎年多く方が亡くなっていますが、車を無くせという人はいませんよね。原発も車も同じ便利なもので、同じ危険なものですが、違うのはコントロールできているかどうかということだと思います。だから原発はまだ早かったんだと思います。後処理の問題もそうですが、もしそれらを完璧にコントロールできるのであれば、僕は悪いことではないと思います。 衆議院選挙なんかでも投票率が過去最低だったようですが、それは「これほどの事態なのに選挙にすら行かない人が多い」ということですよね。おそらく誰に入れても一緒だと思っている人、無関心な人が多いのかもしれませんが、投票所に行って、名前の所に「誰もいません」って書いたらいいんですよ。それでもいいじゃないですか。何もしないという今の人たちが一番怖いです。結局それが自分達の生活に繋がっているんですから。ほんとは政治と経済はすごく密接なのに、あまりに話しが大きくなりすぎて距離を感じてしまっています。でも自分が入れるその一票が積み重なって、変える力になるんです。自分たちは本当は変える力があるにも関わらず、無関心なせいで一部の人たちが国を作ってしまったんです。
私自身震災の時は18〜19歳でした。社会人になって選挙権を持ったにも関わらず、選挙に毎回行っていたかというとそうではありませんでした。無関心だった自分に反省して、そろそろ変わらないといけないと思ったんです。それを気付かせてくれたのが、他ならぬ震災です。
今後はいろいろな問題がどんどん出て来るでしょう。もしかしたら戦争が起こるかもしれない。そういったときにもっと興味を持たないと、また同じことが起きてしまいます。いつまでも対岸の火事ではなく、今後どんなことが自分たちの身に降りかかるか分かりません。その時の準備するには、興味を持ち続けることですね。毎日は無理でも、月に一回でも、そういったことに思いを馳せる時間があればと思っています。




藤丸智史さん 36歳
兵庫県出身。株式会社パピーユ代表取締役。ワインショップFUJIMARUを経営。「大事なことを忘れない様に」と満月の夜に関西各所の飲食店で満月PUBというイベントを開催。

【リンク】
ワインショップ FUJIMARU
株式会社パピーユ






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