東日本大震災によせて




巨大画が伝えるあの日の記憶。
画家 加川広重さん



― 加川さんの現在の活動内容、プロフィールを教えて下さい

1976年に宮城県蔵王町で生まれ、小学校6年生の頃から油絵を習い、武蔵野美術大学油絵科卒業後に蔵王町に戻ってアトリエで大きな水彩画を描き続けています。震災以前から巨大画は描いていたんですが、震災時に自分も当時宮城県にいたので、経験したことを自分の表現手段である油絵と大きな水彩画で表現できるのかもしれないなと思い、震災の巨大画を描きました。最初に描いたのが雪が降っている方(雪に包まれる被災地)で、その1年半後に南三陸の絵(南三陸の黄金)を描いて、現在3作目を描いています。活動としては震災を巨大画で描くことと、今後は震災を舞台背景にしてその前でパフォーマンス、芸術表現、演奏を絵と組み合わせて震災を新しく複合的な表現ができないかなと思っています。今後、仙台と神戸以外でも絵を持って行き、現地のアーティストに震災の思いを絵の前で表現してもらい、東北と色々な土地がアートを利用して繋がっていく事ができないかなと模索中です。

― 一つの絵を制作されるのにどれくらいの期間をかけていらっしゃいますか?

半年くらいかけています。まず小さいバージョンを1〜2ヶ月掛けて描きます。それを慎重にやらないと大きい画に移れないので、それが決まったら大きい紙に描いて同時進行で描いています。

― 作品の題材になっている場所に対する思い入れはありますか?

1作目(雪に包まれる被災地)に関しては総合的な自分が感じた東日本大震災を表現しようとしています。描かれている建物は石巻で見たもので、後ろの船は釜石の海岸壁に乗り上げたアジアンシンフォニーをモチーフにしていて、その他の瓦礫は名取、岩沼、ゆりあげ等を参考にしています。思い入れがあるとしたら石巻のベースになっている建物に震災後、最初に自分が足を踏み入れて、その時は既に瓦礫等は片付けられていた状態でしたが、その時にアイディアが浮かびました。ただ建物自体がどういった建物かはわからないし、もう今は壊されてると思うんですけどね。
2作目の南三陸に関しては震災前に行ったことがなくて、震災後に何度も足を運ぶことになったんですけど、描く時に大規模な街自体がごっそり被害にあった南三陸町の志津川と岩手県の陸前高田を候補にあげていて、ひとつの街がなにも無くなっている空虚感が、大きい画面だからこそ表現できるのではないかと考えていました。
決め手となったのは南三陸に震災のシンボル的な建物になっている防災対策庁舎があったことですね。現在も続いていますが、防災対策庁舎を残すか壊すかの議論になっていた時期だったので描く意味があると思いました。
そして、現在制作している3枚目に関しては、原発事故をテーマにしています。

― 今回神戸で出展されていた時にご覧になられた方の感想で印象的なものはありますか?

阪神淡路大震災の話をされる方が非常に多かったです。東北を描いた震災の絵を見て、ご自身の体験を非常に強く思い返して話して下さる方が多く、印象的でした。

― これからの東北復興に向けて現状問題点、これから必要だと思う事は何だと思いますか?

その時の感情や感覚を絵で表現する事ことなので、具体的なことはわからないですが、一番の問題は同じ所に街を作る事が神戸と違ってかなり難しいということですね。
行政と、そこに住んでいた方がとが、それぞれどういったことを観点から復興、再生と考えるのかという点で、両者の食い違いがどんどん表面化して来ると思います。そして、今一番思うのは、そういったレベルの問題ですらない福島のことです。家も残っている所はあるが、帰れない。それでも原発を再稼働をしようとしています。福島のことを考えると出口が見えないし、皆さんどこに怒りをぶつけたらいいのか分かりませんよね。問題は非常に深く、広範囲で、何がリアルな話なのかも分からない状態ですが、私ができることは自分が感じたことを言葉や写真よりも見る人に明確に表現し、そこから何か生まれていけばいいなと思っています。

― 全国の方に伝えたいメッセージがあればお願い致します。

報道もどんどん少なくなっているのは当然分かりますし、宮城県内ですら報道が減って行き、福島の話題も少なくなっていると思います。それらのいろんな問題を多くの人と共有できる、そのきっかけが私の絵であればいいと思っています。私の絵は一瞬で震災を感覚的に感じるきっかけとして、後はそこで行われるお客さん同士のコミュニケーションなど、そこから何か生まれていくもの、それ自体が伝えたいことになっていくんじゃないかと思っています。
また、難しいと思いますが、やはり一度東北に来て頂きたいです。観光でもいいので足を踏み入れて頂くだけで全然違うと思うので、是非皆さん東北にお越し下さい。




加川広重さん 37歳
宮城県蔵王町出身。武蔵野美術大学卒業後、蔵王町に戻り美術講師を務める傍ら、水彩画化として活動。震災を描いた巨大水彩画を背景にした芸術イベントなどを企画。2014年1月には神戸KIITOにて「巨大絵画が繋ぐ東北と神戸2014」を開催。

【リンク】
加川広重ホームページ






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